株式の希薄化

株式の希薄化とは

株式の希薄化には、経営権(持分)の希薄化と経済的な意味での希薄化の2つがあります。

経営権(持分)の希薄化

例えば、A社の株主としてBとCの2名がおり、それぞれ1株ずつ保有しているとします。A社の企業価値は20万ドル(各株主の持分の価値は10万ドル)とします。

その後、A社はBに対し、10万ドルで1株の新株を発行するとします。そうすると、Cの持分は50%から33%に下落します。これは、経営権(持分)の希薄化を意味します。Cの持分の価値は10万ドルから変化していませんので、経済的な意味での希薄化には当たりません。

経済的な意味での希薄化

同様の例で、A社がBに対し、7万ドルで1株の新株を発行するとします。Bによる新規投資後のA社の企業価値は27万ドルとなり、それぞれの株式価値は9万ドルとなります。Cの保有する1株の価値が経済的に希薄化しています。

当初の投資金額よりも低い価額ではなく、新株発行時点のフェアバリューよりも低い価額での新株発行(sale of cheap stocks) の場合に、経済的な意味での希薄化が生じるという点に注意が必要です。

VCは、優先株主として残余財産優先分配権を有する点で、普通株主よりも保護されていますが、普通株式や、VCと同順位(pari-passu)の優先株式、その他の転換権付優先証券が有利発行されることにより、経済的な希薄化が生ずることになります。

VCにとってのプロテクション

VCは、経済的な意味での希薄化に対するプロテクションとして、

1. 新株発行に対するコントロール権(control rights)
2. 先買権(pre-emptive rights)(新株発行の場合にプロラタで参加できる権利)
3. 希薄化防止条項(anti-dilution provisions)

を要求することが一般的です。