取締役会は、原則として株主の同意なく新株を発行することができます。
したがって、VCは
- 取締役会のコントロール(Board control)
- 株式発行をブロックするための保護規定(Protective provisions)
によって、新株の発行をさせずに優先株式の希薄化を避けることができます。
取締役会のコントロール
日本とは異なり、米国では、VCが取締役会の過半数をコントロールするスタートアップ企業は珍しくありません。
取締役選任に関しては、Voting Agreement(議決権行使契約)において規定されています。取締役会の構成のパターンは数限りなく存在しますが、Voting Agreementの1.2条では一般的な要件が規定されています。
1.2 Board Composition. Each Stockholder agrees to vote…to ensure that… the following persons shall be elected to the Board:
(a) One person designated by Investor A
(b) One person designated by Investor B
(c) One person designated by “Key Holders”
(d) CEO Director
(e) One person not otherwise an Affiliate of Company or any Investor…
(a) One person designated by Investor A
(b) One person designated by Investor B
(c) One person designated by “Key Holders”
(d) CEO Director
(e) One person not otherwise an Affiliate of Company or any Investor…
これによると、取締役会の構成は、VC(2名)、創業者側(2名。Key Holdersとは普通株式のマジョリティを保有している者と定義されている。)、独立取締役(VCと創業者側で相互に合意した1名)とされています。
このように、通常、シリーズA投資の段階では、VCが取締役会の過半数を握っているという状況にはありません。VC投資のステージが進むにつれて、新規の投資家が関与することで、VCがコントロールできる取締役の割合が増えていきます。
アーリーステージのスタートアップ企業において、VCが取締役会をコントロールし、取締役会による有利発行をブロックできる場面は限られてきます。
したがって、VCが取締役会をコントロールする前の段階では、株式発行をブロックできる可能性を保持できるように交渉することが必要になります。