インドにおける株式の譲渡価格規制

ジョイントベンチャーからの撤退

海外への進出形態のうち、現地パートナーとの間でジョイントベンチャー(合弁)を設立することによって事業の展開を図るケースは多くみられます。海外のジョイントベンチャーを組成する際には、自社の100%子会社によって進出する場合に比べて、撤退の方法をあらかじめ検討し、ジョイントベンチャー契約に織り込んでおく必要性が高くなります。特にアジア諸国においてこれまで積極的に事業を展開してきた企業にとって、今般のコロナウイルスの影響により、事業の縮小や撤退を検討する必要性が高まってきているにものと思われます。

インドにおける株式の譲渡価格規制

一般的に、ジョイントベンチャーの解消・撤退に際して、株式譲渡の方法・売却先としては、プット・オプションやタグ・アロングの行使などによる、相手方である現地パートナーや、第三者への売却があります。ただし、国によっては、株式の譲渡に際して、個別の規制を検討する必要があります。

例えば、インドでは、インドの居住者(インド人やインド法人)と非居住者(日本企業などの外国投資家)との間で株式を譲渡する場合に、一定の価格規制が適用されます。

具体的には、インド非居住者からインド居住者への株式譲渡の場合、譲渡価格は、基準価格を超えてはならないとされています。また、逆に、インド居住者からインド非居住者への株式譲渡の場合、譲渡価格は、基準価格以上でなければならないとされています。要するにインド人側が損しないような仕組みになっています。

上限価格は、国際的に認められている価値算定方法により算定した価格(公正価格)(Fair Market Value)となります。

この譲渡価格規制は、いわゆるPricing Guidelineといわれる規制の一つであり、インド居住者・非居住者間で株式の譲渡を行う場合に適用される規制です。

プットオプション

例えば相手方の重大な契約違反が発覚したような場合、違反をしていない当事者がプット・オプションを行使することによって、相手方に株式を買い取らせることをジョイントベンチャー契約に規定しておくことで、ジョイントベンチャーから撤退することが可能となります。

インドでは従来オプション契約は違法とされていましたが、インド証券取引委員会(Securities and Exchange Board of India)やインド準備銀行(Reserve Bank of India)の通達により、オプション契約が認められることとなりました。

ただし、オプションの行使価格については、上記で記載したPricing Guidelineに従う必要がありますので、例えばジョイントベンチャー契約において、非違反当事者がプット・オプションを行使した場合の譲渡価格を、公正価格+XX%とするという条項を定めていたとしても、公正価格が上限となります。