希薄化防止条項(Anti-dilution Provisions)
普通株式の株式分割や現物配当の場合のみではなく、株式の廉価発行(Issuance of Cheap Common Stock)の場合にも、同様に優先株式の転換価額が調整されるための算定式が希薄化防止条項(Anti-dilution Provisions)として規定されています。
既発行の優先株式の現状の転換価額を下回る金額で普通株式(又は普通株式への転換権付優先 株式)が新規発行された場合、希薄化防止条項により、転換価額が下方に修正されるため、既発行の優先株式の希薄化が生じないことになります。
シリーズA優先株式の転換価額が1ドルであるとします。
1ドル以下の$Xで普通株式(又は普通株式1株への転換権付優先株式)が発行された場合、当該転換価額は、
フルラチェット(full-ratchet)の場合、$Xに下方修正されます。
加重平均(weighted-average)の場合、$Xと$1の間のいずれかの金額に下方修正されます。
希薄化防止条項の限界
希薄化防止条項は、普通株式の発行価額が転換価額を下回る場合にトリガーされるという特徴を持つということから、2つの限界があります。
仮に普通株式の発行価額が公正な価格(Fair value)であり、経済的な価値の希薄化が生じていない場合であったとしても、普通株式が優先株式の転換価額を下回る価格で発行された場合には、常に希薄化防止条項がトリガーされてしまうことになります。
また、反対に、普通株式の発行価額がFair value以下であるため、経済的な価値の希薄化が生じていたとしても、普通株式の発行価額が転換価額を上回ってさえいれば、希薄化防止条項はトリガーされないことになります。