CFIUSへの義務的届出が必要な取引

申告制度の義務付け

従前はCFIUSの審査対象となる取引の当事者は、任意に審査申請を行っていましたが、FIRRMA(外国投資リスク審査近代化法(Foreign Investment Risk Review Modernization Act)の制定により、一定の場合にCFIUSへの届出が義務付けられるようになりました。

2018年11月から適用されたパイロットプログラム、及び2020年2月に施行されたFIRRMAの改正規則では、以下の全てに該当する場合にCFIUSへの届出が義務づけられていました。

I. 重要な技術(critical technologies)を生産、設計、試験、製造、加工又は開発する米国事業((1)重大なインフラ、(2)重大な技術、又は(3)米国人のセンシティブな個人データ(米国の国家安全保障に関わるもの)に関与している米国事業)への投資

II. 当該重要な技術が、米国産業分類コード(North American Industry Classification System codes)によって特定される27の産業に関連して使用される又は設計されたものである

III. 外国人が米国事業の支配権を取得するか、外国人が支配権を取得しないマイノリティ出資であったとしても、以下のいずれかの権利を取得する場合

(i) 未公表の重要な技術情報へのアクセス
(ii) 取締役会の取締役やオブザーバーとして参加する権利
(iii) 議決権行使以外の方法で、重要技術・重要インフラ・米国市民のセンシティブな個人情報を取り扱う事業に関する実質的な意思決定への関与

FIRRMA施行規則の改正

2020年5月21日に、FIRRMA施行規則の一部を改正する案が公表され、2020年10月15日に施行されました。

当該施行規則においては、上記II.の要件である「特定の 27 の産業」という限定が廃止され、「重要技術に関する投資であって、当該重要技術を当該投資者へ輸出、再輸出、(米国内において)移転したならば、米国政府の許可が必要になるであろう場合」であって、外国人が以下のいずれかに該当する場合に、原則として、事前の申告義務の対象とされました。

(i) 投資の結果として、米国事業を直接支配できるようになる場合
(ii) 未公表の重要な技術情報へのアクセス、取締役の選任権等、上記IIIに記載した権利を取得できる場合
(iii) 追加直接投資により、上記(i)又は(ii)にあたるようになった場合
(iv) CFIUSの審査の潜脱となるような取引等に関与する場合
(v) 上記(i)~(iv)のいずれかの要件を満たす投資者の議決権の25%以上を直接又は間接に保有している場合
また、米国政府の許可が必要になる場合とは、以下を意味します。
① 輸出管理規則(Export Administration Regulations (EAR))に基づく許可
② 武器国際取引に関する規則(International Traffic in Arms Regulations (ITAR))に基づく許可
③ Department of Energy(エネルギー省)による一定の個別許可又は一般許可
④ Nuclear Regulatory Commission(原子力規制委員会)による一定の個別許可