2022年10月20日、米国財務省(the US Department of the Treasury)は、CFIUS規則に違反する行為の内容及びペナルティを課す際のプロセスや考慮要素等について、エンフォースメントとペナルティに関するガイドライン(CFIUS Enforcement and Penalty Guidelines)を公表しました。本トピックに関するCFIUSによるガイドラインとしては初めてのものとなります。
これまで、CFIUSがペナルティを課したのは2件の事例のみであり、比較的稀なケースであったといえますが、今後は本ガイドラインに依拠した形で、CFIUSによるモニタリング及びエンフォースメントが強化される可能性があります。
CFIUS規則の違反行為(Violation)に該当しうる3つの類型
本ガイドラインでは、違反行為として以下の3つの類型が規定されています。
① Failure to File(義務的届出・通知の提出を怠ったこと)
② Non-Compliance with CFIUS Mitigation(リスク軽減措置の不履行)
③ Material Misstatement, Omission, or False Certification(重大な虚偽記載、記載事項の欠落又は虚偽の証明)
CFIUS規則上、①②の違反の場合は、最大25万ドル又は案件金額のいずれか高い方、③の違反の場合は、1件当たり最大25万ドルの民事上のペナルティが課される可能性があります。
CFIUSは、違反行為が生じているか、いかなるエンフォースメントが行われるべきかを決定するために、しばしば当事者に対する情報提供を要請するとされており、当該要請に対する当事者の協力姿勢は、以下に述べるように、ペナルティの決定に与える一つの要因になり得ます。
また、CFIUSは、違反行為に該当しうる行為を行っている場合、それがリスク軽減措置によって明確に要請されているものではなくても、タイムリーに自己開示することを強く推奨しています。
CFIUSは、このような自己開示の適時性(timeliness)について、8(ア)自己開示の以前に、CFIUS又はその他の当局によって、問題となる行為が発覚していたのか又は発覚されるところであったのか、及び、(イ)当事者が、当該行為の開示を要請するリスク軽減措置を遵守していたか、の2つの観点から評価するとしています。
ペナルティの決定に与えるその他の要因
本ガイドラインは、違反行為へのペナルティの適切性(金額を含む)を決定するうえで、CFIUSが検討する6つの要因を記載しています。
① Accountability and future compliance(エンフォースメントの実施による安全保障の保護及び将来のコンプライアンスの確保などに対するインパクト)
② Harm(違反行為が国家安全保障に与えた脅威の程度など)
③ Negligence, awareness, and intent(違反行為の過失・故意の程度、情報共有にあたっての隠ぺい行為、違反行為におけるシニアレベルの関与度合いなど)
④ Persitence and timing(当事者が違反行為を知ってから、CFIUSがリスクを認識するまでの期間の長さ、リスク軽減措置が発効してからの期間など)
⑤ Response and remediation(自己開示の適時性、CFIUSによる調査への協力、改善策の迅速性、再発防止に向けた内部監査実施など)
⑥ Sophistication and record of compliance(CFIUSとの履歴・familiality, 内部・外部のコンプライアンスリソース、社内のコンプライアンス状況の統一性・コンプライアンスカルチャーなど)