Convertible Noteの特徴
Convertible Note(コンバーティブル・ノート)とは将来的に株式に転換する約束が付されたPromissory Note(手形)であり、その本質的な性質は負債です。より法律的な言い回しをすると「元本等を将来一定の条件下で現物出資(デット・エクイティ・スワップ)に供する特約の付された消費貸借」(竹内信紀・小川周哉「初期ラウンドにおける資金調達の実務と課題」旬刊商事法務2087号(2015年)38頁)ということができます。
なお、日本の企業がConvertible Noteでの貸付を行う場合、理論上は貸金業法との抵触の問題が生じます(金銭の貸付を業として行う者は貸金業者の登録する必要があります)。この点、米国の投資家についても同様の問題が生じますが、リスクをある程度許容した上で、実務上Convertible Noteが広く利用されてきたというのが実情です。
Convertible Noteは負債であるため、他の通常の負債と同様に利息と満期(Maturity Date)が規定されます。しかし、Noteholder(エンジェル投資家)が、社債保持者のように、満期に元本を受け取るという可能性は低く、株式への転換が主に想定されています。
Convertible Noteの転換シナリオ
Convertible Noteが株式に転換又は元本で返還されるシナリオとしては、
① 将来一定金額以上の資金調達が生じた場合(Qualified Financing)
② 対象会社が売却される場合(Corporate Transaction)
③ 満期(Maturity)での返還
の3つがあります。
① Qualified Financing
VCによる資金調達時(シリーズA)に、例えば2Mドル以上の資金が集まった場合(Qualified Financing)に、Convertible Noteの元本と利息は、一定の転換価額によって、当該資金調達において発行される株式(通常は優先株式)に自動的に転換されることになります。
Noteholderは、VCと同内容の優先株式を入手することで、優先株主が時間と費用をかけた交渉によって獲得したのと同じ利益を得ることができるという利点があります。
通常、Noteの転換価額は、VCに対する株式の発行価格から一定のディスカウントで設定されることになります。
② Corporate Transaction
満期又はQualified Financingが生じる前に、対象会社の買収などのM&A取引(Corporate Transaction)が生じた場合、対象会社は元本等の返還を受けるか、一定の転換価額により普通株式に転換することを選択できるという旨が規定されます。
③ 満期(Maturity Date)での返還
①Qualified Financingも、②Corporate Transactionも生じなかった場合、満期日において返還義務が生じることになります。
Noteholderとしては任意で普通株式に転換することも可能ですが、経済的には魅力的な選択ではなく、満期日の延長を両者で交渉することもあります。満期日はNoteの発行から1年(場合によっては2年まで)と規定されることが多いと思われます。
また、Convertible Noteは他の債権者に劣後することを求められることがありますが、一般的にシード段階での財務体質を前提とすると、銀行等が多額のローンを出すことは想定されないため、現実的に問題になることは少ないように思われます。