CFIUSによる審査制度改正の概要

FIRRMAの成立

2018年8月、トランプ大統領の署名により、外国から米国に対する投資を国家安全保障の観点から審査する対米外国投資委員会(the Committee on Foreign Investment in the United States (以下、「CFIUS」といいます。)の権限を強化する法案である外国投資リスク審査近代化法(Foreign Investment Risk Review Modernization Act)(以下、「FIRRMA」といいます。)が成立しました。

FIRRMAは、CFIUSの対米外国投資の審査における権限を以下のとおり大幅に拡大するものです。

審査範囲の拡大

FIRMMAによって、CFIUSの審査範囲は、米国企業を外国人が支配することとなる「合併、取得または買収」から、支配の取得に至らない場合にも拡大されることになりました。

新たにFIRRMAによりCFIUSの審査対象となるカテゴリーとして重要なものは、以下に記載した米国の事業に対する外国人による「その他の投資(Other Investments)」です。

① Critical technology company:重要技術(critical technology)を生産、設計、試験、製造、製作または開発する事業
② Critical infrastructure company:重要インフラ(critical technology)を保有、運営、製造、供給またはサービス提供する事業
③ Sensitive personal data:国家安全保障を脅かす形で悪用される可能性のある米国市民のセンシティブな個人情報を保持または収集する事業

また、前記の事業①ないし③への投資を行う外国人が以下のいずれかに該当する場合には、支配の取得に至らなくても、”non-passive investments”(受動的ではない投資)としてCFIUSの審査対象とされています。

(i) Access to material non-public technical information in possession of U.S. business:米国事業が保有している未公表の重要な技術情報にアクセスできること
(ii) Board membership or observer rights:米国事業(企業)における取締役会の取締役やオブザーバーとして参加する権利を得ること
(iii) Involvement in substantitive decision making regarding critical infrastructure, critical technologies, or sensitive data of U.S. citizens:重要技術・重要インフラ・米国市民のセンシティブな個人情報を取り扱う事業に関する実質的な意思決定に関与すること

実務的には、前記①ないし③に該当する事業に対して投資を行う場合、相手方との間で締結する投資契約や株主間契約において、前記(i)ないし(iii)に該当する内容を規定する場合には、CFIUSの審査申請の必要性を慎重に検討する必要があります。

また、前記に記載したOther Investments以外にも、外国人の米国内における政府施設に近接する不動産や空港・港湾部の不動産の取得・賃借についても、CFIUSの審査対象とされます。